私の祖母は生まれた当初から耳が全く聞こえない聴覚障害がありました。それでも祖父と結婚し、私の母を含め四人の子供に恵まれました。

そんな祖母が、夏の暑い時期に亡くなりました。半年前、末期のガンが見つかっていたのです。他県に住む私は、仕事の都合上お通夜には行けませんでしたが、次の日に妻と四歳の娘を連れて祖母のお葬式に行きました。

祖母は元気だった頃は手話をしながら子供だった私と良く遊んでくれました。色々な思い出がよみがえり、私は涙を浮かべながら参列していました。

厳かに式が進んでいく最中、私の娘がいきなり大きな声で歌を歌い始めました。私は「みんなビックリするから静かにしなさい」と娘を叱りましたが、娘は歌をやめません。私がもう一度叱ると、娘は半泣きになりながらこう言いました。

「だっておばあちゃんはやっと耳が聞こえるようになったんだよ。天国に行くなら、体の病気は全部良くなるってお母さんが言ってた。何でみんな黙ってばかりいるの。声を聞かせてあげなきゃ」と。

私はビックリしたのと同時に、娘の優しさと、生前に祖母が耳が聞こえなかった故に経験してきただろう苦労や辛さが頭の中を駆け巡り、何も言えなくなりました。隣にいた私の母が「そうだね。みんなでおばあちゃんに元気良くお別れしよう」と言いました。

式が終わり、もうすぐある四十九日法要の時の子供の服装を、娘とお風呂に入りながら話しています。

あの時、娘が歌った歌を今度は一緒に大声で歌いました。